日本財団 図書館


であったということのテーマなんですね。
ヴァンデ戦争というのは、パリ革命政府が地方の農村に押しつけた不平等ないろいろな制度、特に地域のカトリック教会の聖職者たちを国家統制しようとしたんですね。これでとうとう最後に純朴な農村の方々が怒り出したんですね。そして、すきやくわを持って立ち上がったんですね。これがヴァンデ戦争です。ボナパルト・ナポレオンがやっと最後に仲直りをさせた。しかし、何十万人という農民が死にました。その歴史をテーマにしているんです。ですから、地域の人々は無条件で積極的に参加するんです。自分のおじいちゃんの、そのまたおじいちゃんたち、おばあちゃんたちがなめたあの苦しみや苦労。しかし、何かを訴え、何かを貫徹しようとしたそういう生きざま、それをテーマにしているわけですから、地域の人もみんな参加するんですね。そして、1年間のかなりの部分はブドウ酒づくりをやっていて、おいしいブドウ酒をつくったりしておりますけれども、そのほかの時間は、ほとんど芝居の練習とか、準備に当てているんですね。だから、生活全体が芝居なんです。
そういうようなことで、地域に潜在しているテーマをどう掘り起こすか、これが大きな課題なんですね。アメリカやヨーロッパではやったものを持ってきて、自分のコミュニティーで多くの人の賛同を得ようたって無理だと私は思います、絶対無理だと思います。確かに一時的な感動はあるかもしれません。たしかに、この間「赤毛のアン」の公演も見ましたけれども、やっぱりいいなと思います、しかし、カナダから出発した「赤毛のアン」のような作品を、北海道の町や村からどうして出せないかというのが私の願いなんですね。そういうふうにお聞き取りいただきたいと思います。決して世界の名作を否定しているわけではございません。マルシャークの「森は生きている」だってすばらしいですね。本当にすばらしいんです。札幌の劇団が連続もう何年になりましょうか、毎年、連続何公演かしておりますが、いつ見てもすばらしいですね。もちろんそうでありますけれども、マルシャークの「森は生きている」というようなすばらしいあの舞台を、北海道なり東北の地域から生まれないかなという夢ですね。こういう夢でこれからのアートマネージメントも考えていくことが大事なんじゃなかろうか、そう思うわけでございます。次は、「地域の文化構造の中で、今、何が、どのように必要とされているか」ということでございますが、地域の文化構造というのは、あくまでも生活文化が核でございます。衣、食、住、歴史、伝承、方言。私の名字も実はこのパラ・コットという、青森県津軽とか上北郡天間林などにあるような、そういう地名から来ているわけでございますけれども。

 

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION